鍬を得たスレイブ

労働者の権利 vs. 会社の都合

 

経営者への告発および糾弾のシステムが発達し、企業と労働者の権力勾配が過去と比較して労働者側に傾いた昨今、企業に有給や育休などの福利厚生を積極的に要求しても良い空気が形作られ、また実際に要求する世の中になった。

 

賃金を上げろ

残業させるな

休憩時間増やせ

有給を寄越せ

産休イクゾー

 

これらの是非はともかく、これを認めれば認めるほど企業の収益が減少するのだから、経営者からすればウザったいことこの上ないだろう。今や駒が人権を経て楯突き始め、より多くのリソースを要求するようになり、都合の良い使役が脅かされつつある。

 

賃金を上げれば企業の手元に残る収益は減る。有給をあげれば働かない時間分も給与を払わなくてはならず、また一時的にマンパワーも減少する。育休の場合は大幅に穴を開けられて迷惑なわけで、穴埋めのために一時的に拙い非正規を雇用しなければならない。

 

激務でおなじみの医療界が以前、女子医学生を差別したのはそのためだ。現場に穴をあける可能性のある女性を弾きたいと考えたからこそ、どこぞの医学部は入試結果を不正に操作した。これが統計的差別。紛れもない事実として、組織の本音としては育休などいい迷惑であって、取得されないに越したことはない。

 

だが冒頭で述べたように、今の世の中は労働者側に傾きつつあるため、女性が育休を取得しやすくなったどころか、男性までもがパパ育休を取得し始めるようになった。こうなるともう、一生独身を貫きそうな非モテ男女を雇用した方が経営者目線ではマシなのではないかと思ってしまう。また独身中年は、家庭持ちと比較して生き甲斐が少ない分、社畜に仕上げるハードルも低そうだし、実際、私が目撃してきた社畜的な人間はだいたい独身だった。家庭を持たない限界独身中年は、仕事一筋の社畜状態に陥れやすい。

 

 

何も難しい話などなく、単純に労働者の権利を認めれば認めるほど会社に残る資本が削れるトレードオフの関係にある。そして譲歩し過ぎたが最後、経営が傾いて潰れる。例えば年間休日100日の会社を、130日に変えたらたちまち衰弱してしまう。稼働時間の減少はすなわち減益を意味する。だから労働者の権利を認めないブラックほど稼働日数が多く、そして儲けを出しやすいわけで、多くの企業がこのグレーゾーンで最大効率を追求している。これぞ究極の効率、ボルテクスストリーム!

 

高度なスキルが求められる職種ならともかく、一般職における大抵のスタッフは使い捨ての歯車なわけで、経営者としてはそんな消耗品に譲歩したくはないだろう。彼らはスタッフの生活を豊かにするべくビジネスを興しているのではなく、お金を儲けたいからそれをやっているに過ぎない。

 

こんな『空は青いです』レベルの話、わざわざドヤ顔で言うことじゃないが、一般的にほとんど大企業しか福利厚生が充実していないのはそういうことだ。中小はともかく、零細では社員に譲歩してなどいられない。そこで引き下がれば潰れる。だからその層の福利厚生はゲボもゲボ。休みも少ない。

 

それを認知した上で私が思うのは、余裕のない企業にまで待遇改善の要求を声高に叫ぶ社員は、ツラの皮が厚いなとも思ってしまう。あまりやり過ぎると、自分の職場を自分で潰すことになりかねないのに。