慰霊の森(現・森のしずく公園)は心霊スポットではない

慰霊の森(現・森のしずく公園)は心霊スポットではない

 

心霊マニアの間ではかねてより有名だった岩手県雫石町の慰霊の森は、今月上旬に心霊スポットという体で投稿されたはじめしゃちょーの動画によって、広く全国へ知れ渡ることになりました。

 

上記の結果として彼の動画は炎上し、謝罪するに至りました。騒動を通じて問題の動画は自主的に取り下げたようです。現在は視聴することができず、検索してもヒットしません。

 

(ちなみに以前も別の配信者が同様のトラブルを起こしています)

 

【追記】

慰霊の森という名称は今年5月に改められ、新たに【森のしずく公園】と名付けられました。

 

改名に際していろいろ理由や建前はあるのでしょうが、私の個人的な推測としては、心霊スポットとして不本意に名を馳せてしまった同所のイメージを払拭する狙いがあると思っています。

 

改名によって不本意なネームバリューをリセットすることができれば、心霊スポットとしての格も落ち、結果として肝試しに来る子供たちも減るでしょうからね。

 

 

幽霊が出たという前例はない

『幽霊が存在するか否か』という水掛け論ないし悪魔の証明はともかくとして、少なくとも慰霊の森で幽霊が出たという事実はありませんし、実際に見たという人もいません。私も2017年のGWに訪れましたが、霊的なものなどいませんでした。ただ5月のわりには寒かった(2℃)です。

 

幽霊が出たという前例はない

 

先に結論を。慰霊の森は心霊スポットなどではありませんので、当然ながら幽霊は出ません。

 

では、なぜ慰霊の森が心霊スポットとしてあそこまで恐れられ、そして持て囃されているかと言えば、同所で発生した大事故に由来しています。

 

現在の慰霊の森となっている雫石町の一区画は、1971年(昭和46年)7月30日に発生した全日空機雫石衝突事故(死者総数162名)によって地獄絵図の様相を呈し、その凄惨さは多くの人に衝撃を与えたと言われています。私も雑誌で当時の写真を見たことがあります。現在なら公的に載せられないようなリアルな現場の写真です。

 

そして、同所で亡くなった人たちを弔うために設けられたのが慰霊の森なわけですが、その事故のショッキングさから若者のあいだで心霊スポットとして祭り上げられるようになり、そしてスポットとしての格を上げるべく、ひとつ、またひとつとうわさ話や怪談に尾ひれが付いていき、現在では犬鳴峠や青木ヶ原樹海などのトップランカーに並び、『全国最恐(凶)の心霊スポット』などと呼ばれています。

 

また、同所の名称である【慰霊】の二文字には、ご覧の通り【霊】というクリティカルなワードが入っているため、いかにも幽霊がいるような印象を受けてしまい、より心霊スポットとしての訴求力を上げてしまう形になったと思われます。 

 

ですが、先ほど述べたとおり、同所で幽霊を目撃した人などいません。誰一人いません。全国トップクラスの心霊スポットとして長年君臨し続けたのにもかかわらず、その地で幽霊を目撃した人など誰もいないのです。幽霊が出るというのはすべてウワサに過ぎません。

 

昭和から続く風説

ネットや一部メディアにありがちな

 

  • 慰霊の森に行くと車のエンジンが止まり、車に手形がついていた。(20歳男性)
  • 血塗れの女の霊がずっと睨んできた。(18歳女性)
  • 肝試しにいった後日、ブレーキが効かなくなり事故に遭った。(24歳男性)

 

この手の体験談風書き込みのすべては、心霊スポットとしてお膳立てするためのものであり、コンテンツの提供者側がアクセスを集めるために書かれたデタラメに過ぎません。その証拠の一つとして、リアルおよびSNSで『出た / 見た』と申告している実在個人が皆無であるにもかかわらず、匿名掲示板やブログではしばしば体験談風に語られています。お気づきの通り、その体験談を語っている人間は実在しません。

 

これらは健康食品の通販でよく出てくる『これを飲んだら毎日の調子が良くなりました(東京都 58歳女性)』系の架空レビューに過ぎません。実体験者がいないために、都合の良い架空の人物に言わせているだけです。

 

上記に関して『じゃあネットやテレビが普及する前からウワサが立っていた心霊スポットはどうなの?』と思う方もいらっしゃるでしょうが、そんなものは神話と同じように勝手に箔がついただけの噂話に過ぎません。ウワサというのはいつの時代も独り歩きするものです。

 

 

心霊スポット呼ばわりするのは遺族に失礼、そして迷惑

心霊スポット呼ばわりするのは遺族に失礼、そして迷惑

 

少し考えたらわかることですが、自分の先祖が事故死した現場を若者が面白がって祭り上げていたらどう思うでしょうか。 不愉快に決まっていますね。だから炎上したのです。これは当事者性の違いからくるギャップと言えます。

 

その上、肝試しに来る若者らの系統はヤンキー的なやんちゃタイプが多いため、石碑や建造物を破壊したり、スプレーで落書きすることがしばしばです。実際、有名なトンネルや建造物には落書きの跡が多く見られます。

 

心霊スポットとして紹介されるということは、すなわちその場所が荒らされることを意味しますので、その地を管理する遺族や自治体・法人・有志にとっては邪魔以外の何者でもありません。迷惑なんです。

 

管理者らは彼らが遊びで残した落書きを消したり、破壊されたものを修復したり、空き缶や花火などを片付けなければなりません。また、遺族や関係者の中には『霊の安らかな眠りを妨げた』と宗教的に考える方もいらっしゃるでしょうから、彼らが精神的苦痛を被ることにもなり得ます。物理的にも精神的にも損害を与えるというひどい話です。

 

ですので、はじめしゃちょーは間接的とは言え、同所における荒らし行為を煽ったと言っても過言ではありません。この点でも遺族から反発が出たのでしょう。影響力のあるインフルエンサーが心霊スポットを紹介し、そして祭り上げたらどうなるのか、彼は早期に気が付くべきだったと思います。

 

それに、あの場はただのトンネルや廃墟とは異なります。墓地です。それも事故現場の墓地です。そりゃネタで行って取り上げたら炎上もしますね。

 

 

紹介されて迷惑なのは他も同じ

心霊スポットとして紹介されて迷惑なのは、他の場所においても同じことです。

 

とっくに放棄された所有者不明の山奥の廃墟ならともかく、公園・住宅街・道路・トンネル・墓地など、これらすべてのものは管理者が維持管理していますので、ネットで見聞きした若者がなだれ込んでくるだけで迷惑極まりないわけです。住宅街なら近所迷惑にもなり得ます。

 

特定の場所を心霊スポットとして祭り上げることで、その所有者や近隣住民に迷惑をかける結果となり得ます。訴えられこそしないでしょうが、自身の承認欲しさや退屈しのぎのツケを他者に払わせているという自覚は持つべきです。これらはある種の加害行為なのですから。

 

 

いずれ心霊スポットは無くなる

近年、科学の発達によって霊の信ぴょう性やリアリティが薄れました。その証拠の一つとして、TVも最近は心霊番組を取り上げなくなっていますし、心霊系ホラー映画もヒットを記録しません。

 

また、ネットの無い時代では "『幽霊を見た』というどこかの誰かの体験談" が霊の存在に対する訴求力をより強固なものとしていましたが、いざネットという蓋を開けてみると、いかにも作り話じみた架空人物の体験談しか散見されず、誰一人として幽霊を見たりだとか祟りにあったという証言をしていません。本当に心霊を体験した人などいなかったのです。

 

こうして、世間の幽霊に対する疑心は年々強まっていて、過去と比較しても幽霊の存在を信じなくなる人が増加しているように見受けられますし、またその結論に達する年齢も早まっていると思われます。

 

その結末として、いずれ心霊の存在は否定され、それに関連して若者世代における心霊スポットというエンターテインメントも廃れていくでしょうし、心霊ホラー映画を始めとする心霊映像を真面目に怖がって視聴する人も減っていき、いずれはそれらの市場も衰退するでしょう。

 

これがネットと科学の世界の結末です。やがて人々は口を揃えて、オカルト・神・幽霊などの存在を否定し始めます。きっとそうなります。今はその過渡期と言えます。(例として、アメリカでは実際に無宗教が増加しています)

 

上記を別の視点で見た場合、心霊スポットというものが俎上に載せられる世代は、数千年続く人類の中でも、今の平成・令和の───21世紀の我々で最後になるかと思います。100年、200年後の祖先たちは、心霊および心霊スポットという概念すら持たない可能性が高いと予想できます。

 

心霊スポットなるものが真面目に語られるのは、きっと我々の世代で最後になるでしょう。