脱コルセットを憂慮する第三者

憂慮する第三者

Person of Interest - S1 Ep01 "Pilot"

 

限りある資源の獲得競争において、あなたはどう戦うか。

 

きっと自分の稼得能力を高めるか、あるいは競争相手にデバフをかける。おそらくは競争相手の牙を抜いてしまう方が楽だろう。自分の価値を高めるより、相手の価値を下げる方がコストは安い。もちろん両方やった方が効果は高い。

 

何の話かって?

何の話だろうね。

 

 

美のボイコット・脱コルセット

脱コルセット

 

髪を整えない

スキンケアをしない

体型に気を使わない

ムダ毛を剃らない

化粧をしない

衣服および装飾に拘らない

女性らしい所作をとらない

 

などといった、女性による女性らしさからのボイコットを脱コルセット───通称 "脱コル" と呼び、巷では『マリオカートで勝てないと分かると逆走するガキと同じ』などとバカにされていたりするが、行為はともかくその気持ちはわからんでもないという話をしたい。

 

いつからだろうか、『男でもすね毛を処理して当然だ』みたいな風潮が蔓延るようになり、今では身だしなみに気を遣う若い男性の大部分がすね毛を何らかの方法で処理しているが、おおよそ10年以上前にそこまでの風潮はなかったはずだ。

 

私の推測では、ある男たちがある時期を境に "中性的" や "清潔さ" による配偶者獲得や承認のアドバンテージを得るためにすね毛を剃ったところ、それが受け入れられ、周囲が追従し、いつしかそれが規範となり、そしてとうとう『すね毛を処理していない男はキモい / ダサい / あり得ない』とする風潮が出来上がってしまった。かつてのスタンダードは過去のものとなり、なんとキモいもの扱いされるほどになってしまったのだ。

 

おそらくだが、すね毛ボーを見るやいなや陰キャラ扱いする女性が一定数いることは想像に難くない。すね毛が許されるのは小学生までだよねーキャハハハ!!www

 

こうなってしまったが最後、嫌でも処理せねばならず、もうすね毛は生やせない。童貞とすね毛ボーと早漏とスタバ未経験の男はダサいのが令和の常識。あと何かあっただろうか。

 

 

こうして男はすね毛を処理せざるを得なくなった。もともとはしなくてもよかったはずなのに、美容規範の発達ないし変遷にともない体毛の処理を余儀なくされた。

 

それに積極的意欲を持たない者まで巻き込む規範の押し付けは抑圧に他ならず、これこそ多くの女性が置かれている立場と変わらない。彼女らは美容していないという一点のみを理由に、社会的評価が著しく低下する。*1

 

すね毛の処理を半ば強要された男性陣の気持ち=美容を是とされている女性の気持ち

 

※抑圧や気持ちの度合いまでイコールでないことは承知の上

 

脱コルとかいう自暴自棄じみた集団自己デバフの逆走行為は理解しかねるが、やりたくないことを常識だからと押し付けられることの面倒くささには心中お察しする。特に女性の美容にかかる時間的・金銭的コストは尋常ではない。これは皮肉ではなく本当に同情している。ダルそう。なにしろ美容のせいで女性の可処分時間は大幅に削られるもの。

 

別に女性だって全員が全員でモテたいわけじゃないだろうし、オスや生殖やチヤホヤに興味のない層もいるだろうから、そういう人は美容なんて無駄だと思うだろうし、できることならやりたくないのだろうけれど、しかし女性として生を受けた以上、社会的評価を損ねないために重い腰を上げて渋々おめかししているのだろう。だから有志でそれを放棄してしまおう、みんなでおてて繋いでやめちまおう、という結論に至らざるを得ないことに同情を禁じ得ない。

 

 

何というか、やりたいことをやって評価が上がるのは当然としても、やりたくないことをやらなくても評価を損ねない社会なんてものがあればいいよねとは思う。もちろんそれは無理なんだけど。この社会はすっぴんも三浪中退も不登校も無職も評価しない。そんな優しい世界など(いまのところ)無い。

 

もしそれらを意図してやらないなら、規範やタスクをボイコットしようなどと考えるなら、文字通り "死ぬ気でやらない" という択をとるしかない。誰も評価してくれないことにわざわざ手を染めるのだから、それこそあえて社会的に死にに行くような行為に他ならない。それこそダーウィン賞の受賞候補だ。

 

そして淘汰は進むだろう。適応できないものは淘汰されるのみ。

 

*1:もっとも、生殖的な観点から───普遍的な性質として女性は容姿を期待されやすく、また長らくそれを基調とした構造が社会にインストールされていることは考慮に入れるべきだろう